商標:拒絶理由通知への対応(第10回)

海外では別ルールで戦う——外国商標出願における拒絶対応の実務
 「日本で登録できたのだから、海外でもスムーズにいくだろう」——そう考えて海を渡ったブランドが、現地の特許庁から手痛い洗礼を受けるケースは後を絶ちません。商標権は「属地主義」といって、国ごとに独立したルールで運用されているからです。
 今回は、日本とは全く異なる外国商標審査の「クセ」と、拒絶理由を乗り越えるための実務戦略について解説します。
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1.なぜ外国では対応が変わるのか
 商標制度に世界統一のルールは存在しません。 日本での登録実績は、他国にとってはあくまで「参考情報」の一つに過ぎません。特に、言語や文化が異なれば、商標から受ける「イメージ(観念)」の判断も大きく変わります。日本ではおしゃれな造語に見えても、現地では「ただの商品説明」や「不適切な意味」と捉えられ、拒絶されることさえあるのです。
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2.主要国ごとの拒絶の“クセ”を知る
 各国の審査には、その国特有の「性格」があります。
• アメリカ:実利を重んじる「使用主義」 登録前後に「実際にその商品で商標を使っている証拠(写真など)」の提出を求められます。形だけの出願は通用せず、ビジネスの実態が厳しく問われます。
• 中国:徹底した「早い者勝ち(先願主義)」 とにかく出願スピードが命です。自社が使う前に第三者に名前を押さえられてしまう「先取り出願」のリスクが非常に高く、これに対する無効・取消戦略もセットで考える必要があります。
• 欧州(EU):多言語国家ゆえの「異議申立」 一つの出願で加盟全域をカバーできる反面、どこか一国でも既存の権利と衝突すれば全体が止まります。既存の権利者からの「待った(異議)」が非常に活発なのも特徴です。
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.拒絶理由通知への対応:現地代理人との「共同作業」
 海外からの拒絶通知に対し、現地の弁護士や弁理士(現地代理人)に「適当にお願いします」と丸投げするのは、失敗の典型パターンです。
 現地代理人は法律のプロですが、あなたの「事業内容」や「ブランドへのこだわり」までは知りません。「なぜこの名前にしたのか」「どのような顧客層に売るのか」「パッケージのデザインは?」といった具体的なビジネス情報を共有して初めて、現地の審査官を説得できる生きた反論が可能になります。
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4.マドプロ(国際登録)の落とし穴
 便利な「国際登録(マドプロ)」制度ですが、「一括で登録される」というのは誤解です。 実際には、指定した国ごとに個別の審査が行われます。拒絶された国ごとに現地代理人を雇い、個別の応答期限を管理しなければならないため、気づかないうちにコストと手間が膨らむリスクがある点に注意が必要です。
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5.戦略的な対応:勝てる市場に集中する
 すべての国で100点満点の登録を目指す必要はありません。
• 優先順位の設定:売上見込みが高い国、模倣品リスクが高い国にリソースを集中させます。
• ブランドの柔軟運用:どうしても登録できない国では、スペルを少し変えたり、現地語のブランドを併用したりする柔軟性も、グローバル展開には欠かせません。
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6.まとめ
 今回のポイントを整理します。
• 本質:外国商標は「国ごとに別ゲーム」。日本の成功体験を捨て、現地のルールに即した戦い方を選ぶこと。
• 実務の肝:現地代理人に情報を「丸投げ」せず、事業実態を詳しく伝えて共に反論を練ること。
 海外進出における商標拒絶は、いわば「現地市場との対話」の第一歩です。焦らず、現地の専門家と連携して、一歩ずつ足場を固めていきましょう。

2026年05月22日