商標:拒絶査定不服審判(第1回)
第1回 拒絶査定で終わりではない
~商標登録への最後の逆転チャンスを知っていますか?~
「拒絶査定」
特許庁から届いたその通知を見た瞬間、多くの経営者の方は大きな落胆を覚えます。
「もう商標登録はできないのだろうか」
「これまでかけた費用や時間が無駄になってしまったのではないか」
「商品名やサービス名を変更しなければならないのか」
そのような不安を抱くのも無理はありません。
しかし、拒絶査定が届いたからといって、商標登録への道が完全に閉ざされたわけではありません。実は、拒絶査定の後にも、登録を目指すための重要な制度が用意されています。それが「拒絶査定不服審判」です。
今回から始まる連載では、この「拒絶査定不服審判」について、中小企業経営者の皆様に向けて分かりやすく解説していきます。第1回は、「拒絶査定が届いたら本当に終わりなのか」という点について考えてみたいと思います。
拒絶査定は「敗北確定」ではない
商標登録出願を行うと、特許庁の審査官が、その商標が登録要件を満たしているかを審査します。審査の結果、問題があると判断された場合には、まず「拒絶理由通知」が送られてきます。
拒絶理由通知は、「このままでは登録できませんが、反論や補正があれば検討します」という意味を持つものです。そのため、出願人は意見書や手続補正書を提出し、審査官に対して反論や説明を行うことができます。
しかし、反論や補正を行ったにもかかわらず、審査官がなお拒絶理由は解消されていないと判断した場合には、「拒絶査定」が発せられます。
ここで重要なのは、拒絶査定は「登録できないことが確定した」という意味ではないということです。
拒絶査定とは、あくまでも「担当審査官による審査が終了した」という意味にすぎません。言い換えれば、審査官との第一ラウンドが終了した状態です。
実際には、その後も登録を目指すための手段が残されています。
なぜ再度の判断を求める制度があるのか
商標の審査には法律的な判断が伴いますが、その判断には評価や解釈の要素も含まれます。
例えば、「この商標は他人の登録商標と似ているのか」「この商標は商品の特徴を表すだけで識別力がないのか」といった問題は、一見すると明確なようでいて、実際には判断が分かれることも少なくありません。
ある審査官は類似すると考えても、別の立場から見れば非類似と判断されることがあります。また、出願人が提出した証拠の評価についても見解が分かれることがあります。
そのため、特許庁では、拒絶査定に不服がある場合に、改めて審理を求めることができる制度を設けています。
これが拒絶査定不服審判です。
逆転登録は決して珍しくない
「拒絶査定不服審判」という制度を知らない方の中には、「一度拒絶された以上、結果は変わらないのではないか」と考える方もいます。
しかし実務の世界では、拒絶査定が出た後に審判を請求し、その結果として登録が認められるケースは決して珍しくありません。
もちろん、すべての案件が逆転するわけではありません。しかし、審査段階では認められなかった主張や証拠が評価され、最終的に登録に至る事例は数多く存在します。
特に、自社にとって重要なブランド名やサービス名である場合には、拒絶査定が出たという理由だけで直ちに諦めるべきではありません。
商標は会社の大切な資産
中小企業にとって、商標は単なる名称ではありません。
商品やサービスの品質に対する信頼、顧客との関係、会社の信用など、さまざまな価値が商標に蓄積されていきます。
もし長年使用してきた名称の変更を余儀なくされれば、ホームページやパンフレットの作り直しだけでなく、顧客に対する周知やブランドイメージの再構築も必要になります。
そのコストは、「拒絶査定不服審判」にかかる費用を大きく上回ることもあります。
だからこそ、拒絶査定を受けた際には、「登録できなかった」という一点だけを見るのではなく、「この商標が自社にとってどれほど重要なのか」という視点から検討することが大切です。
まずは冷静な経営判断を
もっとも、「拒絶査定不服審判」は万能ではありません。案件によっては、審判を請求するよりも、指定商品や指定役務を見直した方がよい場合もあります。また、新たな商標を出願した方が早期に権利化できるケースもあります。
重要なのは、感情的に諦めることでも、感情的に争うことでもありません。
経営者として、自社の事業戦略やブランド戦略を踏まえた上で、最も合理的な選択を行うことです。
その判断を行うためにも、まずは「拒絶査定不服審判」という制度を正しく理解することが必要になります。
おわりに
拒絶査定は、商標登録への道の終着点ではありません。むしろ、登録を目指してさらに一歩踏み出すための分岐点です。
「拒絶査定不服審判」という制度を適切に活用することで、登録への道が開かれることも少なくありません。
次回は、「拒絶査定不服審判」とはどのような制度なのか、その仕組みや審査との違いについて詳しく解説したいと思います。