商標:拒絶査定不服審判(第7回)

第7回 審判でも覆らない商標には共通点がある

 前回まで、「拒絶査定不服審判」の制度や、拒絶査定が覆った事例についてご紹介してきました。
 しかし、現実にはすべての審判請求が成功するわけではありません。十分な準備をして臨んでも、拒絶査定が維持されるケースも少なくないのです。
 では、審判でも登録が認められない商標には、どのような共通点があるのでしょうか。
今回は、その特徴について考えてみたいと思います。

「良い名前」と「登録できる名前」は必ずしも一致しない
 商品やサービスの名前を考えるとき、多くの事業者は「分かりやすさ」を重視します。
例えば、パンであれば「焼きたてパン」、野菜であれば「新鮮野菜」、清掃サービスであれば「安心クリーニング」といったように、商品やサービスの内容が一目で伝わる名称は魅力的に感じられます。
 ところが、商標制度では、このような名称は必ずしも登録できるとは限りません。
なぜなら、その言葉は特定の事業者だけが独占するものではなく、同じ業界であれば誰もが自由に使えるべきだからです。
 商標制度は、「誰か一社のための制度」ではなく、公正な競争を維持するための制度でもあります。

審判でも覆りにくい商標とは
 実務上、拒絶査定が維持されるケースには、いくつかの共通した傾向があります。
代表的なものは、次のような商標です。
・商品の品質や特徴をそのまま表しているもの
・サービスの内容を直接説明しているもの
・業界で一般的に使用されている言葉
・ありふれた氏名や地名のみからなるもの
 このような商標については、たとえ審判を請求したとしても、「そもそも識別標識として機能しない」という判断が維持される可能性が高くなります。
 つまり、審判は「何でも覆せる制度」ではなく、法律上の判断に合理的な理由がある場合には、その結論を変更することは容易ではありません。

「使いたい名前」と「守れる名前」を考える
 経営者の立場からすれば、「お客様に分かりやすい名前を付けたい」と考えるのは自然なことです。
 一方で、その名前が誰でも使える言葉であれば、自社だけが独占することはできません。
つまり、「分かりやすさ」と「独自性」は、ときに相反する関係にあります。
商標制度が求めているのは、「この商品やサービスは、この会社のものだ」と消費者が認識できる目印です。
 そのため、ありふれた表現よりも、少し個性的で独自性のある名称の方が、結果として登録されやすく、ブランドとしても育てやすい傾向があります。

拒絶査定はブランドを見直す機会
 拒絶査定を受けると、「失敗した」と受け止めてしまう方も少なくありません。
 しかし、見方を変えれば、自社のネーミングを客観的に見直す機会でもあります。
 本当にその名称でブランドを育てていけるのか。
 競合他社との差別化は十分なのか。
 将来、商標として自社の財産になる名前なのか。
 こうした視点で改めて検討することで、結果としてより強いブランドにつながることも少なくありません。
 商標登録は、単に権利を取得するための手続ではありません。自社のブランド戦略を見つめ直す、大切な経営判断の一つなのです。

次回は、「良い商標ほど説明しすぎない」と題し、登録されやすく、長くブランドとして育つネーミングの考え方についてご紹介します。

2026年07月24日