著作権(第3回)著作権の保護期間と更新 - いつまで守られるのか?
第3回:著作権の保護期間と更新 - いつまで守られるのか?
本稿では「著作権の保護期間と更新」について解説します。著作権は著作物を創作した人の知的財産を守るための制度ですが、保護には「期間」があります。この保護期間が終了すると、著作物は「パブリックドメイン(公有)」となり、誰でも自由に利用できるようになります。保護期間や更新のルール、そして保護期間満了後の著作物の扱いについて、深く掘り下げていきましょう。
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1. 著作権の保護期間とは?
著作権の保護期間とは、著作権者がその著作物に対して独占的に権利を行使できる期間のことを指します。著作権法では、著作物の種類や権利の発生時期、国によって異なる保護期間が定められています。著作権者は、この保護期間中、著作物を利用する権利を持ち、第三者が無断で利用することを制限することが可能です。
保護期間の設定には、文化の共有と保護のバランスが重要視されています。著作物は知的財産として保護される一方で、時間が経過して社会的な価値が高まると、一般に広く利用できるようにして文化の発展に寄与することが望まれています。
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2. 日本における著作権の保護期間
日本では、2018年に著作権法が改正され、著作権の保護期間が延長されました。ここでは、日本における保護期間の一般的なルールを見ていきましょう。
(1)個人が創作した著作物
日本では、『個人が創作した著作物の保護期間は「著作者の死後70年」とされています。これは、例えば小説、詩、音楽、絵画などの著作物が該当します。保護期間は著作者の死後から数えるため、著作者が長寿であった場合、その著作物は長期間にわたって保護されることになります。
(2)法人が著作権を持つ場合
法人(会社や団体)が著作権を所有している場合、著作物が公表されてから70年間保護されます。もし著作物が公表されないままの場合には、創作から70年が保護期間として設定されます。
(3)映画の著作物
映画の著作物は特別なルールがあり、公表から70年(未公表であれば制作から70年)で保護が終了します。映画は多くの人が関わる複合的な著作物であり、通常の個人著作物とは異なる基準が適用されています。
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3. 国際的な保護期間の基準とベルヌ条約
著作権の保護期間は国によって異なるため、どの国の基準が適用されるかを理解することは重要です。著作物が広く流通する時代においては、各国が著作権保護の基準を一致させることが求められます。
ベルヌ条約による国際的基準
著作権に関する国際条約として最も重要なのが「ベルヌ条約」です。この条約では、加盟国間で著作権の保護基準を統一し、著作権者の権利を互いに認め合うことが定められています。ベルヌ条約に基づき、多くの国が「著作権者の死後50年」を基本とする保護期間を採用していますが、日本やEU諸国、米国では70年に延長されています。
アメリカの保護期間
アメリカでは「著作権延長法」(通称:ミッキーマウス法)の影響で、個人の著作物は著作権者の死後70年、法人の著作物は発行後95年または創作後120年(いずれか短い方)が保護期間とされています。アメリカではディズニーのキャラクター保護の影響で保護期間が延長されるなど、著作物保護が重視されています。
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4. 保護期間の延長と更新は可能か?
著作権の保護期間が一度設定されると、基本的に延長や更新はできません。しかし、法改正により保護期間が延長される場合があります。たとえば、2004年に日本で保護期間が50年から70年に延長されたように、社会的・文化的な状況や国際条約の改訂に応じて保護期間が変更されるケースが存在します。
一方、著作権者が保護期間を「延長」するために何らかの申請を行うことは認められていません。保護期間が法的に定められている以上、著作権者の意思によって保護期間を個別に延長することはできません。
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5. 保護期間満了後の著作物の扱い(パブリックドメイン)
著作権の保護期間が満了すると、その著作物は「パブリックドメイン」となり、誰でも自由に利用できるようになります。パブリックドメインに入ると、著作権が消滅するため、以下のような自由な利用が可能になります。
(1)商業利用が可能
パブリックドメインの著作物は、無償で商業的に利用することができます。たとえば、過去の文学作品やクラシック音楽を使って新たな商品やサービスを開発したり、映像作品に活用することが可能です。
(2)翻訳や改変の自由
パブリックドメインにある著作物は、誰でも自由に翻訳、改変、編集ができるため、新しい表現や作品が生まれるきっかけとなります。これにより、古典作品が現代の視点で新たに解釈され、後世に伝えられていきます。
(3)教育・研究目的の利用
教育や研究分野でも、パブリックドメインにある著作物は広く利用されています。著作権の制約がなくなることで、教育機関や研究者が自由に資料として使用できるようになり、知識や文化の発展に大きく貢献します。
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6. パブリックドメインに関する注意点
パブリックドメインとなった著作物は自由に利用できるとはいえ、以下の点には注意が必要です。
(1)二次著作権の発生
パブリックドメインの著作物に新たな翻訳、編集、注釈などが加えられた場合、その編集者や翻訳者が「二次著作権」を持つことがあります。たとえば、古典文学の新しい翻訳版には、その翻訳者の著作権が発生します。これは、元の著作物とは別に保護される権利であり、自由に使用するには再度許諾が必要です。
(2)商標権や肖像権の制約
著作権が満了しても、商標権や肖像権などの別の知的財産権が存在する場合、その利用には別の権利者の許可が必要です。特にキャラクターや有名人の肖像など、商標や肖像権が関連する場合は注意が求められます。
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まとめ:文化の発展と著作権のバランス
著作権の保護期間は、著作権者の権利を守りつつ、一定の期間が過ぎれば著作物が公共の資産として活用されることで、文化や知識の共有に貢献します。パブリックドメインは、著作権法の重要な役割のひとつであり、社会における知識の発展を促進します。