著作権(第5回)デジタル時代の著作権:インターネットとSNSでの適用
第5回:デジタル時代の著作権
インターネットとSNSでの適用
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はじめに
現代のインターネット社会では、SNSや動画プラットフォームが私たちの生活に欠かせない存在となっています。X(Twitter)やInstagram、YouTubeやTikTokなど、日々数多くのコンテンツが生成され、シェアされています。こうしたデジタルコンテンツのシェアや閲覧は簡単で便利な反面、著作権の問題が多く生じています。デジタル時代における著作権の取り扱いは、著作権のルールが複雑であるため、一般の利用者にとっても混乱しがちな問題です。本稿では、インターネットとSNS上での著作権の適用について、特に画像や動画のシェア、違法アップロード、二次創作といった問題を中心に解説します。
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1. デジタルコンテンツと著作権
デジタルコンテンツとは、インターネット上で配信される音楽、画像、動画、テキスト、ゲームなど、あらゆる電子形式のコンテンツを指します。これらのコンテンツには著作権が存在し、著作物として保護されるべきものが多くあります。
著作権の基本的な権利は、著作権者がその作品をコピーしたり、公開したりする権利を持つことです。しかし、インターネット上でのコンテンツの拡散は瞬時に広がり、オリジナルの出所が曖昧になることがよくあります。特にSNS上での画像や動画のシェアは、元の著作者の意図や権利に反する使われ方をされることも多く、著作権の管理が困難になっているのが現状です。
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2. SNSでの画像や動画のシェアにおける著作権の取り扱い
SNS上で画像や動画をシェアする行為は、日常的に行われていますが、実はここにも著作権が関わります。画像や動画など、他人が制作した著作物を無断で使用・シェアすることは基本的には許されません。
2.1 著作権者の許可が必要な場合
著作物をSNSでシェアする際、以下のような場合には著作権者の許可が必要です。
• 第三者が制作した画像や動画を無断でアップロードする場合: 他人の撮影した写真や制作した映像を許可なくシェアする行為は、著作権の侵害に当たります。
• 商用利用の目的でシェアする場合: SNS上で商品やサービスを宣伝するために他人のコンテンツを使用する場合、商用利用とみなされ、著作権者の許諾が必要です。
2.2 フェアユースと引用の適用
「フェアユース」とは、アメリカなど一部の国で適用される概念で、一定の条件のもと、著作物を権利者の許可なしで使用できる場合があります。日本ではフェアユースの概念は存在せず、「引用」という形で著作物を使う際の基準が設けられています。SNSでの引用もこの「引用」の基準に従う必要がありますが、SNSはあくまで「個人のコミュニケーションの場」として見られるため、厳密な意味での引用が難しいケースが多いです。
2.3 シェア機能の利用
SNSには「リツイート」「シェア」「リポスト」といった機能があり、こうした機能を使ってのシェアは基本的に許されると解釈されています。例えば、X(Twitter)のリツイートは、元の投稿をそのまま他人に見せる機能であり、これは著作権者の許可を得ずとも利用可能です。ただし、ダウンロードやスクリーンショットで保存し、再投稿する行為はこれに該当せず、著作権侵害となる可能性があります。
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3. 違法アップロードの問題
違法アップロードは、映画や音楽、テレビ番組などを著作権者の許可なくインターネット上に公開する行為です。SNSや動画プラットフォーム上でこうした違法アップロードが行われると、著作権者が収益を得られず、またコンテンツの価値も損なわれることがあります。違法アップロードは法的に処罰の対象となり得るため、特に注意が必要です。
3.1 動画プラットフォームでの著作権管理
YouTubeやTikTokなどのプラットフォームでは、著作権者が違法アップロードを検出し、削除を要求できるシステム(YouTubeの「コンテンツID」など)を導入しています。しかし、すべての違法アップロードを検出することは難しく、違法なコンテンツが拡散されてしまうケースも後を絶ちません。
3.2 違法ダウンロードと再アップロードの危険性
インターネット上の動画や音楽を無断でダウンロードし、自分のSNSで再アップロードする行為も著作権侵害に当たります。また、こうした違法ダウンロードには、著作権侵害に加えて、ウイルスや悪意のあるプログラムが含まれているリスクもあり、デバイスのセキュリティを損なう可能性もあります。
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4. 二次創作と著作権
インターネット上では、人気のあるアニメや漫画、映画などのキャラクターを使ったファンアートやパロディ動画など、いわゆる「二次創作」が数多く作られています。しかし、二次創作も著作権の視点から見ると、著作権者の権利を侵害する可能性があるため、注意が必要です。
4.1 二次創作の著作権問題
二次創作は、原作の著作物を改変して作成されるため、元の著作権者の許可を得ることが原則とされています。特に商業的な目的で二次創作を利用する場合は、著作権者からのライセンスや許可が必要です。ただし、著作権者の中には、ファン活動を支持する立場をとる者もおり、二次創作を許容しているケースもあります。
4.2 SNSでのファンアート投稿
SNSでのファンアート投稿は一般的ですが、多くの場合、著作権者がファンの創作活動を黙認している状況です。例えば、アニメやゲームの制作会社はファンアートを容認することでファン層の拡大につながるため、一定の範囲で許容するケースがあります。しかし、ファンアートを無断で使用して収益を得るような行為には制限が設けられています。商業利用の際は、著作権者に許可を求めるか、ライセンスを取得する必要があります。
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5. 著作権を意識したデジタルコンテンツ利用のポイント
デジタル時代において、インターネットやSNS上での著作権を意識し、違反行為を避けるためのポイントを以下にまとめます。
1. 他人のコンテンツをシェアする際は公式の「シェア」機能を利用する
o SNSのシェア機能やリツイート機能を使って拡散することで、著作権侵害を回避することができます。
2. 自作コンテンツを使うか、パブリックドメインの素材を活用する
o 自分で作成したオリジナルコンテンツを投稿することで、著作権侵害のリスクを抑えられます。また、著作権が切れているパブリックドメインの素材や、クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンスの素材を使用するのも一つの方法です。
3. 引用や二次創作は著作権者のガイドラインに従う
o 著作権者が公開しているファンアートのガイドラインなどを確認し、違反しない範囲での創作活動を心がけることが大切です。
4. 違法アップロードや違法ダウンロードには関わらない
o 違法アップロードやダウンロードは著作権法違反にあたるだけでなく、法的リスクやウイルス感染のリスクも伴うため、正規のサービスを利用するようにしましょう。
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まとめ
デジタル時代の著作権は、私たちが思っている以上に複雑です。SNSやインターネット上でのコンテンツシェアが容易になる一方で、著作権侵害のリスクも増しています。著作権に対する正しい知識と意識を持つことで、インターネット上でのコンテンツ利用がより安全で健全なものになるでしょう。