著作権(第8回)著作権侵害とその対処法:どう対応すべきか?

第8回 著作権侵害とその対処法
  どう対応すべきか?


 現代のデジタル社会において、著作権侵害は日常的に発生しています。著作権を有するコンテンツが無断で使用されることは、クリエイターや権利者にとって重大な問題です。この記事では、著作権侵害が発生した際の対処法、法的手続き、および損害賠償請求の流れについて詳しく解説し、適切な対応策について紹介します。
________________________________________
1. 著作権侵害とは?
 まず、著作権侵害とは、著作権を持つ人の許可なしにその著作物を利用する行為を指します。たとえば、他人が作成した文章、音楽、映像、画像などを無断でコピー、転載、配布することが典型的な侵害行為です。著作権法では、著作権者の排他的な権利(複製権、公衆送信権、譲渡権など)を侵害する行為を規制しています。
________________________________________
2. 著作権侵害が発生した場合の基本的な対応
 著作権侵害が発生したと判断した場合、まず冷静に状況を確認し、次のような基本的な対応を取ることが推奨されます。
(1) 証拠の確保
 侵害が発生した場合、証拠の確保が重要です。侵害の状況を記録するため、以下の証拠を集めます。
 • 侵害行為が行われたウェブページのスクリーンショット
 • 無断で使用されたコンテンツのコピー
 • 侵害行為の発生日時、場所、侵害者の情報(可能な場合)
これらの証拠は、後に法的手続きに進む際に必要となりますので、確実に保存しておきます。
(2) 侵害者への通知
 多くの場合、まず侵害者に対して通知を行うことが重要です。著作権を侵害していることを知らせ、侵害行為を停止するように要請する「警告書(通知書)」を送付します。通知の方法としては、郵送やメールなどがあり、文書での通知が望ましいです。通知には次の内容を含めることが一般的です。
 • 著作権者の権利がどのように侵害されたかの説明
 • 侵害行為の即時停止の要請
 • 無断使用されたコンテンツの削除の要求
 • 必要に応じて、損害賠償請求の可能性の警告
 侵害者が悪気がなく侵害行為を行った場合、警告書を受け取ったことで速やかに対応してくれることが少なくありません。
________________________________________
3. 法的手続き:警告書で解決しない場合の対応
 通知しても対応がなされない場合、または悪質な侵害が確認された場合には、法的手続きに進むことを検討します。以下は、日本における著作権侵害に対する主な法的手段です。
(1) 損害賠償請求
 著作権侵害により損害が発生した場合に、侵害者に対して損害賠償請求を行います。損害賠償請求の流れは次の通りです。
1. 損害額の算定:侵害による具体的な損害額を計算します。これは、著作権者が本来得られるはずだった利益や、侵害者が不当に得た利益などを基準に算出します。民法の原則では原告側が損害額を立証しなければなりませんが、著作権法第114条では、損害額の推定規定を設けて立証責任の軽減を図っています。
2. 弁護士への依頼:損害賠償請求は法的な知識が必要であるため、専門の弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士は証拠に基づき、侵害者と交渉し、必要に応じて裁判手続きに進むことができます。
3. 和解の可能性:侵害者と和解が成立すれば、裁判を避けて損害賠償を受け取ることができます。和解が成立しない場合には、訴訟手続きに進みます。
(2) 差止請求
 著作権者は、侵害行為の停止や予防を求める「差止請求権」を持っています。侵害行為が現在も続いている場合、裁判所に差止請求を行い、侵害行為の即時停止を求めることが可能です。差止請求は、特に悪質で継続的な侵害行為に対して有効な手段です。
(3) 刑事告訴
 悪質な著作権侵害の場合、刑事告訴を行うことも検討されます。日本の著作権法では、著作権侵害行為が刑事罰の対象となる場合があり、刑罰は個人の場合「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金」(119条1項)、法人の場合「3億円以下の罰金」(124条)が科される可能性があります。以前、著作権侵害は「親告罪」とされており、告訴をしなければ検察は起訴を行いませんでしたが、現在は「非親告罪」となっており、告訴がなくても起訴されることがあります。
________________________________________
4. 著作権侵害に対する具体的な対応策
 次に、著作権侵害に直面した場合の具体的な対応策について解説します。
(1) デジタルミレニアム著作権法 (DMCA) への対応
 インターネット上での著作権侵害の場合、著作権者はアメリカのDMCAに基づく「削除要請」を利用することができます。DMCAは主に米国内で適用される法律ですが、国際的なウェブプラットフォームでも広く受け入れられているため、YouTubeやFacebookなどのサイトに対して著作権侵害のコンテンツの削除を要請することが可能です。
(2) SNSや動画プラットフォームでの対応
 YouTubeやX(Twitter)などのSNS、動画プラットフォームには、独自の「著作権侵害報告システム」が備わっています。これを利用して、無断使用されているコンテンツを報告し、削除を依頼することが可能です。報告フォームには、権利者としての情報や侵害されているコンテンツの詳細を入力する必要があります。
(3) IT企業との連携
 日本においても、インターネット上での著作権侵害が増加していることを受け、警察やIT企業と協力して対策を講じる動きが広がっています。例えば、特定の著作物に対する不正なコピーが流通している場合には、警察やインターネットプロバイダーに通報し、対応を求めることも検討できます。
________________________________________
5. 著作権侵害を未然に防ぐための対策
 著作権侵害は、発生してから対応するよりも、事前に防ぐための対策を講じることが重要です。以下は、予防的な対策として有効な方法です。
(1) コンテンツに透かしや署名を入れる
 著作権を主張するため、画像や映像には著作権者の透かしや署名を入れることが有効です。これにより、無断使用されても権利者を示す証拠となります。
(2) 権利情報の周知
 著作権に関する情報や利用許可条件を明示し、権利者の許可なく利用できないことを利用者に周知することも予防策の一環です。
(3) 定期的なモニタリング
 自分の著作物が無断で利用されていないか、インターネット上で定期的にモニタリングすることも有効です。例えば、画像検索ツールや著作権侵害を検知するサービスを活用することができます。
________________________________________
6. まとめ:著作権侵害の対策を適切に行うために
 著作権侵害は、デジタル社会の中でますます問題となっていますが、権利者が適切に対応することで、自身の権利を守ることが可能です。著作権侵害が発生した場合には、冷静に証拠を集め、通知書や法的手続きを通じて対策を講じることが求められます。また、予防的な対策を行い、未然に著作権侵害を防ぐことも大切です。
 著作権を持つコンテンツを守り、権利者が安心して創作活動に専念できる環境を整えるために、著作権侵害への適切な対応を心がけましょう。

2024年11月11日