水際対策第4回:輸入差止申立ての手順と準備

第4回: 輸入差止申立ての手順と準備
 本シリーズ第4回では、「輸入差止申立ての手順と準備」をテーマにお届けします。模倣品や海賊版が市場に出回るのを防ぐためには、日本税関の輸入差止申立て制度を適切に利用することが重要です。
 本稿では、輸入差止申立てに必要な書類、証拠資料の作成方法、そして費用や申立てにかかる期間について詳しく解説します。
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輸入差止申立ての基本概要
輸入差止申立てとは
 輸入差止申立ては、知的財産権(特許、商標、著作権、デザイン権など)を侵害する疑いのある製品が輸入される際、税関が差し止めるための仕組みです。
 模倣品が市場に流通する前に排除できる点で、企業にとって非常に有用です。
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輸入差止申立てに必要な書類
 輸入差止申立てを行うには、以下の書類を準備する必要があります。これらの書類を適切に揃えることで、税関での手続きがスムーズに進みます。
1. 申立書
 輸入差止申立てを正式に開始するための文書です。申立書には以下の情報を記載します。
• 対象となる知的財産権の情報
 特許番号、商標登録番号、著作権の登録情報など。
• 申立ての目的
 例: 模倣品の輸入を差し止めたい旨を明記。
• 権利者の情報
 会社名、住所、連絡先。

2. 権利証明書
 申立ての対象となる知的財産権が有効であることを証明する書類です。
• 例:
 o 特許権: 特許登録証。
 o 商標権: 商標登録証。
 o 著作権: 著作権登録証明書。

3. 対象製品の説明資料
 模倣品と正規品の違いを示すための詳細な説明資料が必要です。
• 内容例:
 o 正規品の特徴や品質。
 o 模倣品との違いを明確に記載。

4. 証拠資料
 模倣品が正規品の知的財産権を侵害していることを示すための証拠資料を提出します。
• 画像: 模倣品と正規品の比較画像。
• 鑑定書: 模倣品が知的財産権を侵害していることを専門家が証明する文書。

5. 模倣品に関する情報
 模倣品が発見された市場や流通経路に関する情報を提供します。
• 内容例:
 o 模倣品が販売されている場所(オンラインマーケットや店舗)。
 o 模倣品の輸入元や販売元の情報。
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証拠資料の作成方法
 証拠資料は、税関が模倣品と正規品を比較し、判断するための重要な役割を果たします。以下は、証拠資料作成のポイントです。
1. 画像資料
模倣品と正規品の外観や特徴を比較した画像を用意します。
• ポイント:
o 模倣品と正規品の違いを明確に示す。
o 正規品のロゴやデザインが模倣されている箇所を拡大して表示。
o 高解像度の写真を使用。
• 作成例:
o 商品全体の画像。
o ロゴやデザインの詳細画像。
o 包装やラベルの写真。

2. 書面資料
 正規品と模倣品の違いを文章で説明する書面を作成します。
• 内容例:
 o 製品のサイズ、形状、構造の違い。
 o 使用されている素材の違い。

3. 専門家の鑑定書
 模倣品が正規品の知的財産権を侵害していることを証明する専門家の意見書です。
• 依頼先:
 o 弁理士。
 o 専門分野に特化した技術者。

4. 市場データ
 模倣品が流通している証拠として、市場調査データを提出します。
• 内容例:
 o 模倣品が販売されているオンラインショップのスクリーンショット。
 o 模倣品を販売している店舗の写真。
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費用と期間
1. 費用
 輸入差止申立てにかかる費用は、以下の要素に依存します。
(1) 登録費用
• 権利証明書の取得費用。
• 模倣品鑑定や専門家への依頼費用。
(2) 手続き費用
• 弁護士や弁理士への依頼費用(必要に応じて)。
• 税関への手数料(場合により異なる)。
(3) 証拠資料作成費用
• 画像撮影や印刷費用。
• 市場調査費用。
• 総額目安: 数十万円~数百万円(依頼内容やケースにより異なる)。

2. 期間
 輸入差止申立ての手続きに要する期間は、提出書類の準備や審査プロセスによります。
• 準備期間: 書類や証拠資料の作成に1~3ヶ月程度。
• 審査期間: 税関による認定審査に約1~2ヶ月。
• 実行期間: 申立てが認められると、その後は即座に税関での監視が開始。
• 総期間目安: 約3~6ヶ月。
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成功に向けたポイント
 輸入差止申立てを効果的に行うためには、以下の点を押さえることが重要です。
1. 早期対応
 模倣品が市場に出回る前に迅速に手続きを開始することで、被害拡大を防ぎます。

2. 専門家の活用
 知的財産権の侵害を証明するためには、専門家の協力が欠かせません。弁理士や弁護士と連携し、的確な証拠を提出しましょう。

3. 税関との密な連携
 税関に模倣品の特徴や正規品の情報を詳細に伝えることで、監視精度を向上させることができます。
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まとめ
 輸入差止申立ては、中小企業が自社の知的財産を守るための強力な手段です。適切な書類と証拠資料を準備し、迅速に対応することで、模倣品の流通を未然に防ぐことが可能です。

2025年03月10日