経営戦略策定の【第九歩】リスクに備える!中小企業のための事業継続計画(BCP)
【第九歩】リスクに備える!中小企業のための事業継続計画(BCP)
前回のブログでは、中小企業の業務効率化に不可欠なデジタル化と、導入しやすいITツールについて解説しました。今回は、**予期せぬ緊急事態が発生した場合でも、事業を継続するための備え「事業継続計画(BCP)」**に焦点を当てます。
「うちのような小さな会社にBCPなんて必要ないだろう…」「何から手を付ければいいか分からない…」と感じている中小企業の経営者の方もいるかもしれません。しかし、自然災害、感染症の流行、サイバー攻撃など、事業を取り巻くリスクは決して他人事ではありません。BCPを策定し、万が一の事態に備えることは、事業を守り、顧客や従業員、そして地域社会への責任を果たす上で極めて重要です。
1.なぜ中小企業こそBCP策定が急務なのか?
大企業と比較して経営資源が限られている中小企業は、一旦事業が中断してしまうと、その影響は甚大です。復旧に時間やコストがかかり、最悪の場合、廃業に追い込まれる可能性もあります。だからこそ、中小企業こそ、事業継続のための対策を事前に講じておく必要があるのです。
中小企業がBCPを策定する主な理由は以下の通りです。
• 事業継続性の確保: 緊急事態発生時でも、事業を中断させることなく、または早期に復旧させることができます。
• 顧客からの信頼維持: 事業中断による顧客への影響を最小限に抑え、信頼関係を維持できます。
• 従業員の安全確保: 緊急時における従業員の安全確保と、事業再開に向けた協力体制を構築できます。
• 取引先との関係維持: サプライチェーンの一員として、事業継続への取り組みを示すことで、取引先との信頼関係を維持できます。
• 金融機関からの評価向上: BCP策定は、金融機関からの評価を高め、融資やその他の金融支援を受けやすくなる可能性があります。
• 法的・社会的な責任: 事業継続は、顧客や従業員だけでなく、地域社会に対する企業の責任でもあります。
2.中小企業が直面する可能性のあるリスク
BCPを策定するにあたり、自社がどのようなリスクに晒されているのかを具体的に想定しておく必要があります。中小企業が特に注意すべきリスクの例をいくつかご紹介します。
• 自然災害: 地震、台風、洪水、火災など、事業拠点やインフラに甚大な被害をもたらす可能性があります。
• 感染症の流行: 従業員の出勤停止やサプライチェーンの混乱を引き起こし、事業活動に大きな影響を与える可能性があります。
• サイバー攻撃: 情報漏洩、システム停止、データ破壊など、事業運営に深刻な損害を与える可能性があります。
• 事故・事件: 従業員の事故、設備の故障、テロ事件など、予期せぬ事態が発生する可能性があります。
• サプライチェーンの途絶: 主要な仕入先や委託先の事業中断により、自社の事業継続が困難になる可能性があります。
• 風評被害: 不祥事や誤った情報拡散により、企業の信用が失墜し、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
3.中小企業のためのBCP策定ステップ(概要)
「BCP策定は難しそう…」と感じるかもしれませんが、中小企業でも段階的に取り組むことができます。ここでは、BCP策定の基本的なステップを4つご紹介します。
ステップ1:リスクアセスメント
自社が直面する可能性のあるリスクを洗い出し、それぞれの発生頻度や事業への影響度を評価します。優先的に対策すべきリスクを特定します。
• 具体的な作業: 過去の災害事例の調査、自社の事業特性の分析、従業員へのヒアリングなど。
ステップ2:事業継続戦略の策定
リスクアセスメントの結果に基づき、事業を継続するための具体的な戦略を立てます。
• 重要な業務の特定: 事業継続に不可欠な業務(コア業務)を特定します。
• 目標復旧時間(RTO)の設定: 各コア業務について、事業中断から復旧までの目標時間を設定します。
• 代替手段の検討: 事業中断時にコア業務を継続するための代替手段(代替拠点、代替要員、代替システムなど)を検討します。
ステップ3:事業継続計画の作成
策定した事業継続戦略を具体的な計画書に落とし込みます。
• 緊急連絡体制の構築: 緊急時の連絡系統や担当者を明確にします。
• 初動対応の手順: 緊急事態発生時の従業員の安全確保、被害状況の確認、関係機関への連絡手順などを定めます。
• 代替手段の実行手順: 代替拠点への移動手順、代替要員の配置手順、代替システムの起動手順などを具体的に記述します。
• 復旧・復旧の手順: 通常業務への復旧手順、顧客や取引先への情報提供手順などを定めます。
ステップ4:訓練と見直し
作成したBCPは、実際に機能するかどうかを訓練によって検証する必要があります。また、定期的に計画を見直し、最新の状況に合わせて改善していくことが重要です。
• 具体的な作業: 机上訓練(ディスカッション形式)、シミュレーション訓練、年次計画の見直しなど。
4.中小企業がBCP策定を進める上でのポイント
中小企業がBCP策定を進める上で、いくつかのポイントがあります。
• トップのコミットメント: 経営者がBCP策定の重要性を理解し、積極的に取り組む姿勢を示すことが不可欠です。
• 従業員の参画: BCP策定には、現場の意見や知識が重要です。従業員を巻き込み、共に計画を作成しましょう。
• 無理のない範囲から始める: 最初から完璧な計画を目指すのではなく、できる範囲から段階的に進めていきましょう。
• 外部の専門家の活用: 必要に応じて、コンサルタントや専門機関の支援を受けることも検討しましょう。
• 地域との連携: 地域社会の一員として、自治体や他の企業との連携も視野に入れましょう。
まとめ
今回は、中小企業がリスクに備えるための事業継続計画(BCP)の策定について解説しました。
BCPは、事業を守るための保険であり、企業の信頼性を高める投資でもあります。万が一の事態に備え、持続可能な事業運営体制を構築していきましょう。