商標:拒絶理由通知への対応(第9回)
第9回:眠っている商標をどう崩すか——不使用取消審判の戦略活用
商標の拒絶理由通知で、最も頭を悩ませるのが「他人の似たような商標が既に登録されている(4条1項11号)」ケースです。しかし、その先行商標、本当に今も使われているのでしょうか?
もし、その商標が3年以上使われていないのであれば、たとえ有効な登録であっても取り消すことができるかもしれません。今回は、拒絶理由を打破するための「攻めのカード」である不使用取消審判について解説します。
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1.不使用取消審判とは何か:眠れる権利を整理する
(1)制度の概要
商標法では、登録された商標が「継続して3年以上」日本国内で使用されていない場合、誰でもその登録の取り消しを求める審判を請求できると定めています。これは、使われていない商標が市場を独占し続けることを防ぎ、新しいブランドの誕生を阻害しないための「整理整頓」の仕組みです。
(2)拒絶理由対応との関係
実務において、不使用取消審判は強力な反撃手段です。先行商標が原因で拒絶された際、単に「似ていない」と主張する(防御)だけでなく、「そもそもその商標は使われていないから消すべきだ」と攻めることで、自社の登録への道を切り拓きます。
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2.どのような場合に検討すべきか:事前の「見極め」
闇雲に審判を仕掛けるのは危険です。まずは以下の調査で、相手の「使用実態」を探ります。
• インターネット・SNS調査:最新の製品情報やサービス紹介があるか。
• 店舗・広告・業界資料:現在進行形でビジネスが動いている形跡があるか。
• 注意点:Webサイトが見つからないからといって即「不使用」とは限りません。BtoB企業や限定的な地域でひっそり使われている可能性も考慮し、慎重に判断します。
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3.審判の進み方:請求人に有利な「立証責任」
この制度の最大の特徴は、「使っていることの証明」を商標権者が行わなければならないという点です。 通常、裁判などでは訴えた側が証拠を出しますが、この審判では逆です。請求人は「使っていないはずだ」と主張するだけでよく、権利者側が「いや、この3年間にこれだけ使った」という証拠(納品書や広告など)を出せなければ、その場で取り消しが確定します。
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4.成功のポイントとタイミング戦略
• 対象の絞り込み:登録から時間が経過しており、更新だけを繰り返しているような商標は狙い目です。また、相手の権利全部ではなく、自社のビジネスに邪魔な「一部の指定商品」だけを狙い撃ちして取り消すことも可能です。
• スケジュール調整:不使用取消審判には数ヶ月から1年程度の時間がかかります。拒絶理由通知の応答期限との兼ね合いを考え、審査官に「今、取消審判を戦っているので、判断を待ってほしい」と働きかけるなどのテクニックが求められます。
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5.よくある落とし穴:リスク管理を忘れずに
• わずかな使用での反撃:相手が「たった1回だけ、パンフレットに載せた」といった証拠を出してくるだけで、取り消しを免れるケースがあります。
• 費用対効果:審判にはそれなりの費用がかかります。審判で1年争うよりも、ブランド名を少し変えて出し直す方がビジネス上合理的な場合もあります。
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6.まとめ
今回のポイントを整理します。
• 本質:不使用取消審判は、使われていない先行商標を「消去」して自社の登録枠を空けるための攻めの手段。
• 戦略:立証責任が相手にある有利な仕組みを活かし、拒絶理由通知への対応と並行して「ビジネス上の勝ち筋」を検討すること。
眠っている商標に遠慮する必要はありません。相手がどんな大企業でも大丈夫です。正当なルールに基づき、市場を健全化させることも弁理士の重要な仕事の一つです。
本記事についてのご相談: 不使用商標と同一類似の商標を使用したい場合は、ぜひ一度ご相談ください。勝ち筋のある戦略を提案いたします。