中小企業のためのAI活用術(第15回)

第3部:AIを育てる(発展・戦略編)
第15回:セキュリティとコンプライアンス – AI活用における注意点
 AI活用に関するブログも、いよいよ第3部の終わりが見えてきました。今回は、AI導入を考える上で絶対に避けては通れない、「セキュリティとコンプライアンス」という重要なテーマについてお話しします。
 「AIは便利だけど、情報漏洩が怖い…」 「個人情報を扱っても大丈夫なのか?」
このような不安は当然のことです。AIは、私たちのビジネスに大きな恩恵をもたらしますが、使い方を誤ると、情報漏洩や法的リスクといった深刻な問題を引き起こす可能性があります。経営者として、これらのリスクを正しく理解し、適切な対策を講じることが、AI活用の成功には不可欠です。
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なぜAI活用におけるセキュリティが重要なのか?
 AIは、学習や処理のために大量のデータを必要とします。これらのデータには、顧客の個人情報、会社の機密情報、社員の個人情報などが含まれることがあります。
AIツールにこれらの機密情報を安易に入力してしまうと、以下のようなリスクが発生します。
1. 情報漏洩のリスク: 入力されたデータが、AIサービスの提供元を通じて、意図せず第三者に流出してしまう可能性があります。一度流出した情報は、取り戻すことはできません。
2. 学習データとして再利用されるリスク: 多くの汎用AI(ChatGPTなど)は、ユーザーが入力したデータを学習データとして再利用する場合があります。これにより、あなたの会社の機密情報が、他のユーザーへの回答に利用されてしまうという、重大なリスクをはらんでいます。
3. コンプライアンス違反のリスク: 個人情報保護法など、法律や規制に違反する可能性があります。個人情報や機密情報を不適切に扱うことで、社会的信用の失墜や、巨額の損害賠償につながることもあります。
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経営者が知っておくべき3つの注意点
 これらのリスクを回避するために、中小企業の経営者として、最低限知っておくべき3つの注意点と対策を解説します。
1. 汎用AIに「機密情報・個人情報」を入力しない
ChatGPTやGoogle Geminiといった汎用AIは、誰でも手軽に利用できる反面、セキュリティ面でリスクがあります。
【具体的な対策】
• 社内ルールの策定: 「顧客の個人情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレスなど)や、会社の機密情報(財務データ、未発表の新商品情報、取引先情報など)を、汎用AIツールに入力することを禁止する」といった明確なルールを策定し、社員に周知徹底します。
• 利用環境の整備: 有料のビジネスプラン(ChatGPT Enterpriseなど)を導入することも一つの選択肢です。これらのプランは、入力したデータを学習に利用しない設定になっていたり、より厳格なセキュリティ対策が施されていたりします。
2. AIツール提供元の「利用規約」を必ず確認する
AIツールやサービスを導入する際は、利用規約を必ず確認しましょう。特に以下の項目に注意が必要です。
• データの取り扱い: 入力したデータがどのように扱われ、どのように保存されるのか。AIの学習に利用される可能性があるか。
• データの所有権: 入力したデータや、AIが生成したコンテンツの所有権は、誰に帰属するのか。
• セキュリティ対策: どのようなセキュリティ対策が講じられているのか。ISO27001などの国際的なセキュリティ認証を取得しているか。
【具体的な対策】
• 担当者を決める: AIツールを導入する際は、利用規約の確認を担当者に任せるのではなく、経営者自身が目を通すか、信頼できる担当者と共同で確認します。
• 専門家への相談: 利用規約の内容が複雑で理解が難しい場合は、弁護士などの専門家に相談することを検討しましょう。
3. AIを「使う人」に対する教育を徹底する
AI活用における最大のセキュリティリスクは、ツールの脆弱性ではなく、「人為的なミス」です。社員一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが、何よりも重要です。
【具体的な対策】
• 定期的な研修: AI利用における情報セキュリティに関する研修を、定期的に実施します。具体的に「どんな情報をAIに入力してはいけないのか」「なぜリスクがあるのか」を分かりやすく解説します。
• 「AI活用ガイドライン」の作成: 社員が迷ったときに参照できるよう、社内でのAI活用のルールをまとめたガイドラインを作成します。具体的に禁止事項や推奨事項を明記し、誰もがアクセスできる場所に共有します。
• 不正利用の監視と報告体制: 不適切なAI利用が疑われる場合や、情報漏洩が発生した際に、速やかに報告できる体制を構築します。
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専門家に相談すべきタイミング
 AI活用におけるセキュリティやコンプライアンスは、専門的な知識が必要となる場合があります。以下のような状況に陥った場合は、迷わず専門家(弁護士、ITコンサルタントなど)に相談することを強くお勧めします。
• 顧客の個人情報や、企業の機密情報を扱うAIシステムを導入する場合
• AIが生成したコンテンツの著作権や所有権について懸念がある場合
• AIの利用規約や契約内容が複雑で、自社だけでは判断が難しい場合
• 情報漏洩やコンプライアンス違反が疑われる事態が発生した場合
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まとめ:AIは「リスクを理解し、管理する」ことで初めて価値を発揮する
 AIは、あなたの会社を成長させるための強力なツールですが、その力を最大限に引き出すためには、リスクを正しく理解し、適切に管理することが不可欠です。
• 「情報の安全」を最優先に考える。
• 安易に機密情報を入力しない。
• 利用規約をしっかり確認する。
• 社員のセキュリティ意識を高める。
これらの基本原則を守ることで、AIを安心して活用し、あなたのビジネスを次のステージへと引き上げることができます。
次回からは、第4部「未来を創る(展望編)」に入ります。次回は、AIが変える未来のビジネスについて、5年後、10年後の展望を予測します。ご期待ください。

ご注意>
 本ブログは4部20章で構成します。
 毎週1回更新の予定ですので、早めにお試しになりたい方は、ご相談ください。
 「AI活用の基礎知識」(4部23章構成)を発売中。本ブログで内容の一部をご紹介します。

2026年01月09日