中小企業のためのAI活用術(第3回)AIの種類と、自分の会社に役立つAIはどれ?

中小企業のためのAI活用術
第1部:AIを知る(基礎編)
第3回:AIの種類と、自分の会社に役立つAIはどれ?
 前回は、AIが人手不足や生産性向上といった、中小企業が直面する課題をどう解決しうるかについて解説しました。今回は、AIの種類を具体的に見ていき、自社のビジネスモデルに合ったAIはどれなのかを一緒に考えていきましょう。
 「AI」と一口に言っても、その種類はさまざまです。AIを「魔法の箱」として漠然と捉えるのではなく、それぞれのAIがどのような得意技を持っているのかを知ることで、自社に最適なAIを見つけ出すことができます。
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AIの「得意技」を知る
 AIには大きく分けて、いくつかの得意分野があります。ここでは、ビジネスで特に活用されている代表的なAIを3つご紹介します。
1. 自然言語処理(NLP)AI:言葉を理解するアシスタント
 自然言語処理(NLP)とは、人間が使う「言葉」をコンピューターが理解し、処理する技術です。皆さんが普段使っているスマートフォンの音声アシスタントや、翻訳アプリもこの技術が使われています。
このAIの得意技は、以下の通りです。
• 文章の生成: 企画書の作成、メールの返信文、ブログ記事のアイデア出しなど。
• 要約: 長い会議の議事録や、複雑な報告書を簡潔にまとめてくれます。
• 分類: 顧客からの問い合わせメールを内容別に自動で振り分けます。
• 感情分析: 顧客からのレビューやSNSの投稿から、商品やサービスに対する感情を読み取ります。
【自分の会社ではどう使う?】
• 小売・サービス業: AIチャットボットが顧客からの問い合わせに自動で回答し、カスタマーサポートの負担を軽減。
• 営業: 顧客との商談記録をAIで要約し、次のアクションをスムーズに決定。
• マーケティング: AIを活用して顧客のレビューを分析し、商品改善や広告戦略に活かす。
💡ポイント: 顧客や社内のコミュニケーションに関わる業務が多い会社に最適です。

2. 画像認識AI:目を持った検査官
 画像認識AIは、画像や動画に写っているものが何かを判別する技術です。スマートフォンで顔認証ロックを解除したり、QRコードを読み取ったりするのもこの技術の応用です。
このAIの得意技は、以下の通りです。
• 物体検出: 画像の中から特定の物体(例:不良品、特定の部品)を見つけ出します。
• 顔認証: 人物の顔を識別し、入退室管理や勤怠管理に活用します。
• 文字認識(OCR): 画像に写っている文字をデータ化します(例:手書きの書類を自動でテキストに変換)。
【自分の会社ではどう使う?】
• 製造業: 生産ラインでAIカメラが製品の画像を分析し、不良品を自動で検知。人間の目視検査にかかる時間とコストを削減。
• 建設・土木業: ドローンで撮影した画像をAIで分析し、構造物のひび割れや劣化を早期に発見。
• 物流業: 荷物の伝票をAIが自動で読み取り、仕分け作業を効率化。
💡ポイント: 視覚的な情報を扱う業務が多い会社に大きな効果を発揮します。

3. 予測AI:未来を読むコンサルタント
 予測AIは、過去のデータから将来の出来事を予測する技術です。天気予報や株価の予測もこの技術が使われています。
 このAIの得意技は、以下の通りです。
• 需要予測: 過去の販売データから、将来の商品やサービスの需要を予測します。
• 故障予測: 機械の稼働データから、故障する可能性を事前に予測し、メンテナンスの最適化を図ります。
• 行動予測: 顧客の閲覧履歴や購買データから、次に購入する可能性のある商品を予測し、パーソナライズされた提案を行います。
【自分の会社ではどう使う?】
• 小売業: 需要予測AIを活用し、商品の発注量を最適化。食品ロスや在庫切れを防ぎ、利益を最大化。
• 製造業: 機械の稼働データをAIが分析し、故障の兆候を事前に察知。計画的なメンテナンスで、生産ラインの停止を未然に防ぐ。
• 営業・マーケティング: 顧客のデータから、次にどの顧客にアプローチすべきかをAIが予測。営業活動の効率を向上させる。
💡ポイント: データが豊富にあり、そのデータを活用して未来を予測したい会社に最適です。
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自分の会社に役立つAIを見つけるためのヒント
 AIの種類を理解したところで、いよいよ自分のビジネスに最適なAIを見つけるためのヒントをお伝えします。
ステップ1:「AIで解決したい課題」を明確にする
まずは、AIありきで考えるのではなく、自社が抱えている課題をリストアップすることから始めましょう。
• 「いつも人手不足で、残業が多い部署はどこか?」
• 「顧客からの問い合わせ対応に時間がかかりすぎているのではないか?」
• 「在庫管理がうまくいかず、ロスが多い」
• 「営業活動が属人化しており、効率が悪い」
このように、具体的な課題を洗い出すことで、どんなAIが必要なのかが見えてきます。
ステップ2:課題解決に最適な「AIの得意技」を選ぶ
課題が明確になったら、それに合ったAIの得意技を探します。
• 例1: 課題が「顧客からの電話問い合わせが多い」であれば、言葉を扱う自然言語処理AIが解決の糸口になります。AIチャットボットや、自動音声応答システム(IVR)の導入を検討してみましょう。
• 例2: 課題が「製品の検品作業で、見落としが多い」であれば、目を持つ画像認識AIが有効です。AIによる不良品検査システムの導入を検討してみましょう。
• 例3: 課題が「在庫の管理がうまく行かず、発注のタイミングに困っている」であれば、未来を読む予測AIが役立ちます。需要予測システムの導入を検討してみましょう。
ステップ3:「スモールスタート」で試してみる
いきなり大掛かりなシステムを導入する必要はありません。まずは、無料のAIツールや、月額数千円で利用できるSaaS型のサービスから試してみることをお勧めします。
例えば、自然言語処理AIの代表例であるChatGPTは、無料で使うことができます。これを使って、社内文書の作成や、メール返信のたたき台を作る練習をしてみるだけでも、AIがどれだけ便利かを体感できます。
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まとめ:AIは「課題解決のための道具」です
 AIは、万能な魔法の杖ではありません。しかし、それぞれのAIが持つ「得意技」を理解し、自社の課題に合わせた道具として活用すれば、必ずや大きな成果をもたらします。
大切なのは、「何のためにAIを使うのか」という目的意識をはっきりと持つことです。
 次回は、いよいよ「AI導入の第一歩 – まずは無料ツールで試してみよう」というテーマで、今日からすぐに試せる具体的なAIツールと、その活用方法について詳しく解説します。
AIをただの流行り言葉で終わらせず、ビジネスを次のステージへと導く「強力な武器」に変えていきましょう。

<ご注意>
本ブログは4部20章で構成します。
第3部第15章で「セキュリティとコンプライアンス – AI活用における注意点」について記載します。AIをお試しになる場合は、第15章を読み終えてからにされることを強くお勧めします。
毎週1回更新の予定ですので、早めにお試しになりたい方は、ご相談ください。

2025年09月26日